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レポート

 「稲押し倒し防止法」
 「ネット埋め込み機」
合鴨水稲作における雛の飼育と放飼のタイミングについて
発芽玄米について
竹園西小吉成先生との出会い
無農薬栽培のためのイネの種子処理
詳細 (日本語/English/French)



  「稲押し倒し防止法」

田宮氏が3年前(2年前だったっけ?)の茨城県合鴨水稲会の技術交換会で紹介し、茨城県内で静かに広がりつつある工夫を全国の皆さんにも紹介します。効果は抜群なのですが、なにせ投入資金がゼロなので利用者からパテント料をもらうわけに行かないのが残念です。

写真1:鴨の出入り口になるところでは、一度でも稲を押し倒されてしまうとその後
どんどん奥に倒されていって被害が広がってしまいます。

写真2:鴨を放すときに、藪から切ってきた篠棒を一番外側の稲に添え木します。す
ると鴨はそこを避けて泳ぐので一本も倒されずに済みます。

田んぼにミステリーサークルを作られやすい方もこれを導入してみればサークルの大
きさが最小限で済むと思われます。是非おためしあれ。

小長谷裕宝  03・08・20

  「ネット埋め込み機」

玉造合鴨水稲会の改造人間、田宮製作所の新商品です。背負式草払い機を改造して作りました。
これでネットの裾を埋め込んでいくとあっという間に裾押さえが完了します。驚いたことに、自分も今年初めて、この秘密兵器を使わせてもらいましたが、裾を持
ち上げて逃亡するカモが、今年は一羽もいませんでした。田宮氏に確認したところ、彼の所でも脱走はなかったという話です。恐らく、土との密着性が高いので、ネットがしっかり土に入り込み抜け難くなるのだと思います。
以前はマルチ張り機を使いましたが、円盤が大きいためネットが深く入りすぎる難点がありました。が、新型機は円盤が小さいため適度な深さで止まってくれるので重宝しています。


報告者:小長谷裕宝
--
KONAGAYA Hirotaka (G4)
e-mail: kona-ufo@mwb.biglobe.ne.jp
Homepage: http://www5b.biglobe.ne.jp/~Aigamo21/
Arigato-Bye be
2003・8・3

合鴨水稲作における雛の飼育と放飼のタイミングについて

2001.6.28

小長谷裕宝,,野原裕秀

目的:合鴨の雛を丈夫に育てるこつと田んぼに放すタイミングを紹介する

 

1. はじめに

       アイガモ農法の創始者である古野隆雄氏の「合鴨ばんざい」(農文協1992年刊)が世に出てから9年が経ちます。その間に九州から始まった合鴨農法実践の波は、あっと言う間に日本全土ばかりかアジア各国に広がり、中国・韓国・ベトナム・ラオス・カンボジア・フィリピンでは農民レベルでの実践がされており、さらにタイ・バングラデシュ・イラン・タンザニアでも試験場レベルでの実証試験が行われるまでになりました。

       こうした中で「合鴨ばんざい」は中国語・韓国語・ベトナム語に翻訳されて広くアイガモ農法を実践する農家のバイブルとして扱われてきました。1994年には玉造合鴨水稲会(会員4名)が組織され、「合鴨ばんざい」をマニュアルとして合鴨農法に取り組んできました。

       が、ここにきて幾つかの問題が生じてきました。その中でも雛の飼育について今回フォーカスし、玉造合鴨水稲なりにどのように自分たちのスタイルに合うように改良してきたのかをレポートしたいと思います。

 

2. 「合鴨ばんざい」に掲載されている育雛技術

       「合鴨ばんざい」図45 アイガモ水稲同時作の暦 (p.69)によりますと、普通期作(6/15-6/20田植え)の場合、育雛期間を2週間とし、早期作(5/1 田植え)では、1カ月の育雛期間をとっています。その理由として、この時期はまだ寒く稲の生育が遅いためと説明されています。そして雛を外気温に慣らすまでの育雛期間での細かな温度管理が示されています(p.76)。

       ここで「合鴨ばんざい」を読んだことない人のためにそこに示されているひなの育て方についてざっと説明します。(古野さんは大阪の高橋人工孵化場の高橋保博氏の指導受けて本に掲載しており、高橋氏が第四回全国アイガモフォーラム広島大会にて発表した資料(1993年)より抜粋して紹介)。

・育雛箱を準備する。

・床にもみ殻・おが屑等を敷き、乾燥を保つ。

・生まれてすぐのヒナが発送されてくるので、ひな到着後30分ほど休ませた後に砂糖水を飲ませて旅の疲れを取る。

・最初の1時間は、水のみを飲ます。その後水に漬けてふやかした小米を食べさせる。

・飲水器はくちばしのみが入るようにする。これは水を床にまき散らさないようにするため。

・温度は1日目35度、7日目25度、10日目20度、その後外気に慣らす。

・外気温に慣れたところで暖かい日を選んで水浴びをさせる。

 

3. 実施してみての課題

       玉造合鴨水稲会でも合鴨農法開始当初の3年間は「合鴨ばんざい」に従って育雛し、それでも調子の悪い雛がいると家に連れ帰り、お湯に入れたり、こたつで別管理したりと手をかけて少しでも元気にヒナを育てようと努力してきました。

       ところが、玉造合鴨水稲会のメンバーは、

A氏水田耕作地7. 5ヘクタール+受託耕作地7. 5ヘクタール+たばこ栽培、

B氏水田5ヘクタール(借地含む)+施設園芸、

C氏水田3ヘクタール+サツマイモ、

D氏兼業
       の経営内容となっています。

       つまり水稲作+αの枠組みの中でプラスアルファの部分が経営の柱になっているにもかかわらず水稲の移植とプラスアルファの作目の移植の時期が重なっているため、非常に繁忙で、ヒナの飼育にあまり時間かけたくないという実状があります。

       また、いくら合鴨農法が除草効果に優れているといったところで、育雛にあまり手がかかるようでは農法の普及に影を落とします。と申しましても、育雛時の細かな温度管理は、親のいないヒナたちにとって人間が親の代わりになって面倒見なくてはならない、つまり生物を飼う上での大切な決まりごとであろうと納得して実践してきました。

       しかしながら、一方では、細かな温度管理は、カモ本来の生きる力を喪失させ、人間依存型の家畜としてのカモを作り出しているのではないかとの疑念を持ち続けてもいました。

 

4. 研究の成果

       そうした中で少しずつ改善を積み重ねてきた現在の玉造合鴨水稲会の育雛方法は、「合鴨ばんざい」のやり方から少しずつ変わってきました。卵から親鳥が孵した自然のカモを観察すると、驚いたことに、生まれたばかりの時から親について水の中を泳いでいます。親鳥は雛をしばらく泳がせると陸に連れて行き羽に着いた滴をくちばしできれいに取り除いてやり、羽の下で暖めてやります。体が温まった雛は、親の羽の下から抜け出すと、また水に入って泳ぎを楽しみます。これを何度も繰り返します。

       (財)環境科学研究所の森田らによりますと、0週齢の雛を水に入れても羽の油が水をはじくが、水慣らしをしないで育雛したカモ(4週齢)を水中に放すと、カモの羽は水をはじかないで、溺れてしまうことが報告(1995)されています。

       同様に、鴨の羽の撥水性は、耐寒能力を左右しました。10度の冷水に10分間放置した後の鴨の体温変化についてのデータですが、撥水性がある場合で、2.1度の低下であったのに対して、撥水性のないグループでは、13度も低下し、撥水性のあるグループの鴨のグループに低温処理後の鴨の行動に異変は発見されませんでしたが、撥水性のないグループでは全ての個体が生命の持続に困難を示す”横倒しになったまま動けなくなる”状態にまで達しました(1996,森田ら)。

       上記のことからも鴨の水慣らしは早い程良いと言え、萬田(1999年 鹿児島大)らも「ゼロ日齢放飼」により、鴨の飼育は安定すると発表しています。

 

5. 改善技術

       これらの発表は、自分たちの経験を裏付ける大切な報告でした。そこで、自分たちが作成したマニュアルを自信を持って公表することができるようになりました。

 

           玉造合鴨水稲会の育雛マニュアル

[カモの注文と引き取り時期]

・ 1月中に椎名孵化場へカモを注文する。

・ 田植えの日と前後するようにカモの雛を取りに行く。

 

[到着?2日目]

・ カモヒナが到着したら、暖を取ったコタツにカモヒナを入れる。

・ 飲み水が不足しないように十分確保する。

・ 最初の2日間は屑米を水でふやかしたものを餌とする。

・ カモヒナが到着した日から水浴びをさせて、早くから水に慣らす。

・ 日光が当たっている間は水浴びを好きなだけさせる。

・ 寒いときは凍えないようにする。

・ 最初の2晩は確実に暖を取ったところで眠らせる。それ以降は、寒がっていなければ外でも構わない。

 

[3-7日目]

・ 外気温が高ければ、早め(5-7日目)に田んぼに入れて慣らす。

・ この時期に鴨を田んぼに放せるように、丈夫な苗を育てて植えること。そうでないと傷みが激しい。

・ 遅くとも一週間目には、鴨を田んぼに放せるように準備をしておく。

 

[田んぼに放飼後]

・ 田んぼで凍えていたり、ひっくり返って起き上がるのに苦労しているカモは、コタツで温め、餌を十分与える。

・ 生育不良のカモは、田んぼでの動きがのろかったり、集団について行けなかったりするので、すぐ分かる。このようなカモは、小さいうちに餌を十分食べさせれば、ある程度生育は追いつく。ただし、あまり長い間集団から隔離しておくと、次に集団に戻そうとしても、なかなか集団に入れない。

 

       このマニュアルとその前に紹介した高橋氏の育雛方法とを比較してみるとずいぶん簡略化されていることが解ると思います。


           高橋氏の指導         玉造合鴨水稲会のやり方
育雛箱を準備する。 陸と水浴び場をネットで囲い、コタツを置く。
床に籾殻・おが屑等を敷き、乾燥を保つ。 コタツの下に籾殻を敷く。
生まれてすぐのヒナが発送されてくるので、ヒナ到
着後30分ほど休ませた後に砂糖水を飲ませて旅
の疲れを取る。
鴨は直接孵化場に取りに行く。暖かい時間帯に到
着させ、直に泳がせる。
最初の1時間は、水のみを飲ます。その後水に漬
けてふやかした小米を食べさせる。
到着後から水と小米は食べ放題。ふやかした小米
を食べさせるのは最初の2日間だけ。
飲水器はくちばしのみが入るようにする。 飲水器は必要ない。
温度は1日目35度、7日目25度、10日目20度、そ
の後外気に慣らす。
温度はヒナがコタツの中で重ならない程度に調節。
初日から2日目までの夜間はコタツに入れるようにする。
外気温に慣れたところで、暖かい日を選んで水浴
びをさせる。
初日から暖かければ日中は泳ぎ放題。
5日目に田んぼの一角を囲んで放し、休憩所に帰れる
ようであれば、次の日に囲いを取る。


       上空からのカラスには、テグスを張り、周りからちょっかいを出す犬・イタチ・狸などを電柵ネットできちんと防除してやれば、雛が到着したときに最初から含まれている目の見えない雛・動きが極端に悪い雛・ほとんど飯を食べない雛(1%くらい混ざっている)は、ほとんど最初の一週間で死んでしまうので、それ以降死ぬ雛は全くと言っていいほどいません。

 

6. 結論

・ 田植えの日とカモの買い始めの日をできるだけ近くの日にする。

・ 初日から水浴びをさせ、水に慣らす。

・ 2日目までは、寒さに気を付ける。

・ 天気の良い日に田んぼへ放す。

・ 田に放す前は、餌と飲み水を十分に与える。


7. さいごに

   古野さんの名誉のために断っておきますが,古野さんも水慣らしは早ければ早いほど良いと常日頃から言っておられます.しかしこの文章は、「合鴨ばんざい」しか読んだことの無い人、または合鴨農法について見聞きした事はあるが実際にやった事の無い人を対象にまとめましたので,その後の古野さんを良く知る人がこれを呼んだとき,おかしいじゃないかと感じるかもしれません.古野さんどうも御免なさい.



 発芽玄米について
玉造合鴨水稲会

最近、健康食として注目されているのが、発芽玄米です。

発芽玄米とは、玄米を一定温度の温水に浸し0.51mmほど発芽させたものです。

発芽時に玄米中のグルタミン酸が玄米に含まれている酵素の働きでギャバ(ガンマーアミノ酪酸)に変化し増加する。(発芽玄米のギャバ増加は、白米の約10倍、玄米の約2倍)

 

             発芽玄米の豊富な成分と効果

ガンマーアミノ酪酸

(通称ギャバ)

高すぎる血圧を下げる(血圧調整作用)・神経の鎮静・中性脂肪を抑える

食物繊維

便秘・大腸がん・高コレステロール血症を予防

イノシトール

脂肪肝・動脈硬化を防ぐ

フェルラ酸

活性酸素をのぞく・メラニン色素の生成を抑える

トコトリエノール

活性酸素をのぞく・紫外線から肌を守る・コレステロールの増加を抑える

フィチン酸(IP6

抗酸化作用・貧血を防ぐ・高血圧を防ぐ・メラニン色素の生成を抑える

カリウム

高血圧を防ぐ

カルシウム

骨粗しょう症を防ぐ

亜鉛

動脈硬化を防ぐ

貧血を防ぐ

マグネシウム

心臓病を防ぐ

PEP阻害物質

アルツハイマー病の予防・治療が期待できる

 

                ギャバの多彩な効果

ギャバとは

ガンマーアミノ酪酸=通称ギャバ(GABA)アミノ酸の一種で、天然に広く分布している。発芽時に玄米中のグルタミン酸が玄米に含まれている酵素の働きでギャバに変化し増加する。

効    果

血圧を正常にする

動脈硬化を抑える

脳疾患の後遺症(頭痛や耳鳴りなど)を抑える

イライラ、不眠、自律神経失調症、更年期障害、初老期精神障害に効果。

鎮静作用

腎臓の働きを高める

肝臓の働きを良くする

 

玉造合鴨水稲会では、メンバーがいろいろな方法で発芽玄米を作り食生活に活かしています。そこで、メンバーの取り組みを紹介致します。

小長谷

私の発芽玄米の作り方を説明します。多分1番簡単な方法だと思います。それは玄米を水の中につけて2日間待ちます。たったそれだけです。おそらく40度ぐらいのお湯の中につけた方が早く仕上がると思います。

 

野原

なるべく口の広いポットに、ぬるま湯を入れその中へ玄米を入れ発芽するまでに2〜3回

ぬるま湯を交換するだけで、発芽玄米が作れます。だだし気温の上がるこれからは、臭いの出てくるのが難点です。

 

田宮

私の方法は、1回に1人分の少量から数十人分の20kg程度まで約24時間で発芽玄米が作れます。

その方法は、熱帯魚用の水槽を利用しますので、手軽に作れます。

温度管理は、サーモスタット付きヒーターで、希望の設定温度(30℃)が保てます。

最適発芽に必要な酸素も、水槽に使用している循環ポンプで、酸素補給が容易に出来ます。

木炭や竹炭を入れると、より美味しい発芽玄米が出来ます。

この様な方法で、熱帯魚観賞ならぬ発芽玄米観賞をし、毎日腹いっぱいになっているのです。

 

皆様もぜひ、玉造合鴨水稲会の『愛鴨米』玄米を御利用になり、発芽玄米を食生活に加えてみませんか。

参考資料:現代農業2001.3より

 

 

発芽玄米ご飯の炊き方

 

普通に白米を炊くのと同じ釜、同じ要領で大丈夫です。

お好みで、発芽玄米の量は変えられますが、いずれも普通よりは、軟らかめのご飯が出来ますので、水加減は少しすくな目が良いかと思います。

最初は2〜3割の混合が適量かと思います。


 


  竹園西小吉成先生との出会い
小長谷裕宝 /田宮 満


 平成12年6月3日(土)にカモの田んぼの見学に来てくれたのが、私達と吉成礼似子先生との最初の出会いでした。
吉成先生は、茨城県つくば市立竹園西小学校5年生の担任で、見た目は小がらで、やさしい顔立ちをした方なのですが、話をするうちにパワーの塊のような人だと言う事が段々とわかって来ました。
 車から降り立ったその姿は、片手にビデオを持ち、助手に娘さん(美沙子ちゃん小学3年生ぐらい)を引き連れて現れました。早速田んぼへ行くと、ビデオをメモ代わりに質問の嵐が私たちに発せられ、私たちはタジタジとなってしまいました。
最初小学校の先生が学校で子供たちとイネの勉強をしているので、カモの田んぼを見に来たいと言う電話をもらった時、大変失礼な話なのですが、せいぜい、バケツに苗を植えて育てている程度かなと思ったのですが、意に反して田んぼでの質問は、お百姓さんもびっくりのかなり専門的なものでした。
 「カモは田んぼに何羽入れるのですか?」
 「何日目のカモを使うのですか?」
 「どうして、去年のカモを使わないのですか?」
 「ここに浮いている藻はアゾラですか?」
 「エサは何をやっていますか?」
 「肥料はどうしていますか?」
 「中干しの時カモは田から上げるのですか?」
 「学校でミルキークイーンの種を播いたのですが、水の中で腐ってしまいました。それは何故ですか?」
 「普通のイネは、一穂に80粒ぐらい着くと聞きましたが、ここでは何粒着きますか?」
 「学校でビニールを張って、田んぼを作っているのですが、こちらのように分けつしないのですが、どこに問題がありますか?」
 「JAで買った籾は塩水に入れると青色になったのに、父兄から譲っていただいたミルキークイーンを入れたほうは透明のままでした。何が違うんですか?」
 「それに、JAの籾はほとんどが塩水に沈んだのに、ミルキークイーンの方は半分くらいが浮いてしまいました。ミルキークイーンは、軽いのですか ?」
質問はいつの間にか、合鴨農法の質問を離れて、学校でのイネ作りのことになっていました。
それにしても吉成先生恐るべし!。 (さらに物語は続く、次回を請うご期待)
                                                                  

                                                                    

 無農薬栽培のためのイネの種子処理

 筑波国際センター  研修二課  農業開発栽培班  稲作担当  小長谷裕宝
  詳細 (日本語/English/French)

 イネ種子伝染性の病害は、これまでに7種類が確認されている。菌類による馬鹿苗病、ゴマハガレ病、イモチ病;バクテリアによる褐条病、籾枯細菌病、苗立枯細菌病;センチュウによる心枯線虫病である。これらの病害が発生した苗をほっておくと、苗代でその病斑が広がり苗が枯死したり、苗のマットが形成されずに機械で植えられないなどの弊害がある。

 私が有機農業を始めたとき、イネ種子の消毒をどうするかという課題に直面した。当時、(1)消毒不要、(2)化学的消毒、(3)湯に漬ける消毒法、という3つが一般的であった。

 私は自然界に存在しない物質を使いたくなかったので、比重1.17で選種しただけで育苗したところ、育苗箱120枚のうち20枚の苗が苗細菌病類の被害のため使えなかった。次に(3)を試みたところ、全く被害は出なかった。温湯処理(パスツール法)の有効性は農家の間では通説となっており、もともとは秋田県大曲市の有機栽培農家佐藤栄氏が60℃の湯に5分間つけるという方法で始めたのが最初ではないかと思われた。そこで、佐藤氏になぜ温湯処理法を始めたのか尋ねたところ、処理温度や時間の根拠は明らかではなかった。

 そこで温湯処理法が、いかに種子の消毒に効果のあるものなのか調査した。ちなみに野菜の種子処理は、乾熱処理が一般的であるが、稲籾では実用的でないという報告があるので、処理の対象から外した。

 温湯処理の試験にはいる前に、誰でもできる優良種子を得る方法として、比重選が行われている。しかし、いくつの比重が適当なのかが明確でなく、指導者によってその値がまちまちであるので、異なる比重による種籾の選抜と苗の生育の試験をしたところ、以下の結果が得られた。

 籾の比重が大きいほど発芽率は高く、苗の生育も良く、健全な苗が得られた。したがって種子は、できる限り比重の大きな種子を準備することが望ましい。が今回ハーベスタ収穫した4kgの種籾を重い方から2kg取った場合、ほぼ比重1.16以上となり、充分に重い種籾が選抜できた。種籾の準備の段階で必要種子量の倍を準備することにしたらどうだろうか。

 次に温度については、できるだけ高い温度で処理をすると殺菌効果が高いことが解っていたので、できるだけ高温で、かつ90%以上の発芽率を保証しうる温度を試験した。その結果、発芽率90%以上の限界点は、70℃では1分・60℃では8分の組合せとなった。

 同様の試験を、外国稲・日本稲・モチ・ウルチについて行ったが、ツクバハタモチでは発芽率90%を保証する処理時間は、60℃では5分が限界であった。ハタモチ以外の品種については、現場での温度設定のあいまいさや、時間の不正確さを考慮すると結局、処理温度と時間についての組合せは、佐藤氏が実施している方法が、いかに有為性であるかが実証された。

 次に60℃5分間の温湯処理についての殺菌の効果であるが、先ず種子伝染性病害の種類とその対応剤についての組合せ表で現在の化学的手法について比較してみると、農薬単剤では、菌類病/バクテリア病/センチュウの総てには対応していないことが分かる。

 表1 稲種子伝染性病害と主な対応消毒剤

          商品名 
  種類      病名
ベンレートT トリフミン

ヘルシード

テックリード

モミエース

キャッチャー

コサイド

スターナ・
トリフミン

エビセクト
菌類 馬鹿苗病

ゴマハガレ病

イモチ病

バクテリア 褐条病

籾枯細菌病

苗立枯細菌病

線虫 心枯線虫病

                                 (S日本植物防疫協会研究所の資料より作成)


 それに対して比重選や温湯処理によって処理した場合、それぞれの病害に対する効果を次の表2に示した。

 表2 稲種子伝染性病害に対する比重選と温湯処理の効果

   種類    病名 比重選 温湯消毒

有効

無効

有効

無効

菌類 馬鹿苗病

ゴマハガレ病

イモチ病

バクテリア 褐条病
籾枯細菌病

苗立枯細菌病

線虫 心枯線虫病

 注)○は報告数が一つのみまたは当センターでの結果のみ、◎は複数の報告がなされているもの

 総合的に判断して、1.13以上の比重選と60℃5分間の温湯処理を同時に実施することでおおむね種子の消毒は可能であ る。

 処理時には、比重選及び温湯処理の各々の技術が籾を完全に殺菌するものではない事を理解した上で、できうる限り比重の重い種子を選別する、5分間の処理中に湯温が下がらないように処理籾に対してお湯の割合を多くする、つまりドラム缶等の大きな入れ物を準備する、籾をお湯に浸けたら籾を上下させて湯温の変異を無くす、毎回の処理時にかならず湯温を確認する等の工夫が必要である。

 しかしながら、種取りの段階で病害発生の無い場所を選ぶという基本に立ち返ることが最大事で、これにより病害発生を極力抑えられる。繰り返しになるが、病気に犯されていない健全な籾を得るために、健全に育った稲の籾を採種する。外的要因に対して耐えられる、つまり体力のある重い籾を選種する。それでも病害が心配な場合は、病原の相対数を減らすため温湯処理等の処置をする。これらの実施により、育苗期での病害の発生を抑える。

 ところで、病原の相対数を減らす温湯処理は、ある特定の病気に対処する化学的方法と異なり、田んぼに鴨を放す合鴨水稲同時作になんと似た技術だろうか。鴨が田んぼの生物達を食べ尽くすことが不可能なように、温湯処理も病原を完璧にたたくことは出来ない。それでも田んぼの稲は健全に育つ。ここには、小さな生物達と植物との間の人智を越えた駆け引きが感じられる。

 以上より普及段階での結論としては、

 (1)種取りは病害の無いところから選ぶこと。

 (2)比重選を実施して中味の充実した種子を選ぶこと。

 (3)目安としては選種後種子が半分になるくらいにすること。

 (4)温湯処理は60度5分で実施すること。

 (5)温湯処理に供する籾は、乾籾または選種直後のまだ吸水してない籾であること。

 (6)処理中水温が下がらないようにすること。

 (7)処理後直ちに冷水にて冷やすこと。

 ということで実施し、農家の皆さんの稲の無農薬栽培に役立てていただければ幸いである。


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