11話 新人マンガ家さん、これだけは注意しよう

 編集長が変わると雑誌の方針も変わる。編集長のGOサインが出て、掲載なり連載なりの企画を進めている途中で、編集長が異動で変わり、企画がボツになるなんていうのは、よく聞く話だ。
 企画を進める前に、ちゃんと金銭的な話をして、確認したほうがいい。とくに新人の場合は。この業界、そういうにはうやむやで、いくら払ってくれるとか、そういう話は企画を進める前に出てこない。
 でも本来、事前にきちんと話しするべき問題なのだ。「企画がダメになったら金は出さん」というなら、それはそれで結構、こちらもそれを覚悟するのだから。
 新人さんの場合はつい、遠慮してしまって、そんな話を切り出せないだろう。それをいいことに、お金の話をうやむやにしたまま話を進め、ポシャッタら連絡もせず逃げてしまう編集者も中にはいるので、新人さんはよくよく気をつけたほうがいい。とくに異動の時期は要注意だ。

 反対に、金銭的な話を事前にしてくれる編集さんがいたら、かなり信用していいと思う。そして企画がダメになった場合、きちんと連絡をくれて説明をしてくれ約束を守ってくれる編集さんなら100%信頼していい。
 とはいえ、それが本来の当然な仕事だと思うのだが・・・よっぽど下に見られているのだ。
 ま、そんな態度をとられるということは、こっちに商品価値がないため見切りをつけられたと判断するべきなのかもしれない。

 編集者も忙しいので、ダメになった企画のことなんかにかまっているヒマはないのだ。

 そう、そんな思いをしたくなければ売れっ子作家になれ、というのが出版側の論理だ。まだ売れるかどうか分からないヤツに気を遣うことはない。
 描かせてもらうだけでありがたく思えということなのだ。

 私が経験した話をしようぞ。
 かなり昔だが、小学館の某編集部(小学館は異動が多いので、とっくに当時の編集者も編集長もいないので編集部の名は明かしても無駄・・・)で、ある新人編集(女性だった)が原作を持ってきて、私に企画を進めてきた。(それは水泳ものだったが)
 企画料は出すということだった。原作を読み込みキャラを画にして設定し、と企画を進めていた。
 でもなぜか連絡がこなくなった。こちらから連絡入れると企画はボツになったということだった。早々に電話を切られた。そのあともちろんその編集からは連絡はない。「企画料は・・・」と思ったが、その頃まだまだ新人だった私は結局涙を飲むことになる。おそらくその新人編集者は編集長に確認とらず先走りしてしまい、私ごときに企画料なんてやる必要ないということだったのだろう。ま、企画料とれるほど私もエラくはないということも私自身思っていたのであきらめはすぐにつく。

 だがボツになったんならせめて、早く連絡が欲しかった。本来、向こうから連絡取るべきなのに。この業界、ボツになると連絡がこないのが、まかり通っている。
 なので、うるさがられても、こちらからひんぱんに連絡をとり、状況を確認しながら仕事を進めたほうがいい。

 他にも・・・まだマシなケースだが、ビジネスジャンプでも危うくそうなりかけた。こちらは編集長のOKをとり、買取原稿を描いていた。途中、編集長が替わった。前編集長のOK出した原稿を仕上げ、担当に渡した。
 その後、振り込まれるはずの原稿料が、約束の時期を過ぎても振り込まれない。仕方ないので担当に催促の電話を入れる。「分かりました、確認をとりしだい、来月振り込みます」ということだった。
 そして「その来月」がきた。イヤな予感はしていた。やはり振り込まれていない・・・また催促の電話をする。こっちだってそんな電話したくないよ・・・
 「ええ?おかしいですね。じゃあ、来月に」と担当。
 だが、その来月も振り込みはなかった。
 また催促の電話をする。
 「何だか副編集長が忘れていたみたいで、僕はちゃんと伝えてたんですけど」と担当。

 結局、3回催促をして、やっと約束より3ヶ月遅れて振り込まれた。
 おそらく編集長が替わり、私はもう「いらない」ということだったのだろう。それならそれで「いらない」と言ってくれればいいのに・・・でも約束したお金は払ってね。
 そうこうしているうちに私を担当していた編集が集英社をやめてしまい、私は「マンガ編第7回」で話した、相性の悪いモトの編集へ戻されてしまい、ビジネスジャンプを去った。

 ま、小さな出版社だと原稿料がなかなか振り込まれないのはよく聞く話だ。
 新人さん、やりにくいかもしれないけどお金の催促はしつこくやろうね。

 さて1番ヒドいケースを語ろう。これは知り合いのマンガ家から聞いた話だ。そのマンガ家も自分のホームページ上でその話をした。
 それは・・・アイディアを編集に盗まれ、ほかのマンガ家にそれを描かせたのだ。小学館某編集部での話だ。
 そのマンガ家は当時の編集部と編集者の名を明かしたらしいが、ここでは伏せる。
 だいぶ昔のことでもあるし、当時の編集者や編集長は異動でほかへ行ってしまっているので、編集部の名を明かしても仕方ないからだ。小学館はほかの出版社に較べて異動が多いのは、編集者が責任を逃れるためかと勘ぐりたくなる話よのお。
 編集者の実名は、私が直接体験したことではないので、ここで明かすことはできない。

 盗まれたマンガ家は当然、抗議した。でも編集は逃げ回り、応対しない。結局、泣き寝入りだ。その後そのマンガ家は小学館を出て、他の出版社で活躍している。

 これは特別にヒドイ話だが、こういうこともあるんだということじゃ。

 もちろん、小学館の全部の編集さんがひどいわけじゃない。多くはいい編集さんだ。私もいろいろとお世話になった。

 ま、でもコワいのお・・・。 

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