第14回 編集者とのやりとり

 私が初めての連載を担当してくれた編集者はとてもクールな人だった。なので私も編集者とはかなり距離をおいた付き合い方をするようになった。
 担当と一緒に取材に行ったこともない。話すときは当然「ですます」だ。

 知っているマンガ家の中には編集者と飲みに行ったり、遊びに行ったり、タメ口聞いたりしている親しい間柄になっている人もいる。

 でも所詮は仕事でつながっている間柄だ。こちらに商品価値がなくなれば離れていくのは当然のこと。連載中はあんなに面倒見てくれたのに、それが終われば、電話もかかってこなくなる。親しくしていればいるほど、そうされると寂しく落ち込むだろう。

 某雑誌での連載が終わり、いくつかボツをもらった後、「冷めちゃったんですよね」と担当から言われた。ま、つまり「お前はいらない。ほかへ行ってくれ」ということだ。連載中はアイディアを一緒に考えてくれたりして「同志」という感じだった編集者だ。
 ただすごく親しいわけじゃなかったので「そうか。なら他でがんばるか」と私も割り切れた。むしろ、飼い殺しにされるより、このほうがよっぽど親切だ。担当の情熱がなくなったら、その担当と組んでいても仕方ない。担当も私とは距離をおいた付き合いをしていたので正直に言えたのだと思う。

 ま、もちろん担当と親しいマンガ家はうらやましいが・・・。でも決して友達ではないのだ。

 さて、編集者にもいろんな人がいるが、やっぱおもしろいのは「他人のウワサ好き」な編集者だ。「いやあ、ハヤシさんだから話すんだけど・・・」とほかの編集者やマンガ家のことをあれこれ話してくれるのだ。
 でもそうやって他の人にもいろいろ話しているに違いない。そして当然私のことも・・・気をつけねばな。やはり距離をおいたほうが良さそうじゃ。(そして、こうしてペラペラしゃべっているハヤシにも気をつけようぞ、皆の者)

 例えば・・・私を担当していた某社の東大卒の元編集者はバブル絶頂のころ、マンションを買ってしまった。1番高く・・・しかも結構不便なとこだ。今なら半値か・・・なのにきっと現在も高いローンをかかえているだろう。
 そのことをうれしそうに、じつにじつに、うれしそうに他の編集者が話すのだ。他人の不幸は蜜の味とはこのことか・・・。彼は東大卒なので、ちょっとやっかまれていたのかもしれない。

 そう、東大はやっぱりみんなから注目を浴びる。そして、自分から決して「東大出身」とは明かさない、必ずまわりのウワサ話から「あの人、東大なんだよね」と聞かされるのだ。

 その他の大学の場合は結構自分から「僕は○○大学なんですけどね」とポロッと言う人がいる。もちろん私からは「どこの大学?」だなんて聞いてない。
 某編集部にいた時、担当がポロッと「僕は早稲田なんですけどね」と言った。私はただ「ああ、そうですか」と答えた。するとさらに担当は「東大も受けたんですが」と言った。思わず私は「へええ・・・すごいですね」と感嘆してしまった。やっぱ、東大って聞くとなぜだかそういうリアクションしてしまうよな・・・
 すると担当はうれしそうに「いやあ、受けただけですから」と、ほんとうにうれしそうに答えた。
 やっぱ、東大って、特別なものがあるのだろうか。今度から「早稲田」も「すごーい」と感嘆してあげねばな・・・。
 ところで「広末」はちゃんと早稲田を卒業できるんだろうか・・・勉強の厳しい私立中学(高校までつながっている)に通っている、私の元生徒が怒っていたぞ。自分たちが必死に勉強しても早稲田の推薦は学年トップクラスの成績をとらないともらえないのにと。(前に「ハヤシの戯言」に書いた、大人になったら何もせずのんびりたらたら暮らしたいと言っていた疲労のたまった生徒の話じゃ)

 さて、ハヤシが知っている今まで担当してくれた東大卒の編集者は3人じゃ・・・が、皆さん、ご安心を!3人とも「天は二物をあたえなかった」ぞ。(ん・・・ま、男だから良いではないか、仕事に生きようぞ)

 しかも・・・、
 そのうちの1人の編集さんに聞きたかった・・・なぜ前髪を切りそろえる?さらに・・・すごくおもしろい容貌になるぞ・・・東大以上にインパクトがあるぞ。とにかく一目見たら忘れられない編集さんだ。(すごいぞ)

 ああ、「前髪切りそろえ」といえば、もう1人いた。(東大かどうかは知らないが)しかも「ちょび髭」まで生やして、こちらもなかなかインパクト。
 ちょっと前に10年ぶりに偶然お会いしたけれど、お変わりなくインパクトじゃった。つまり10年間「前髪切りそろえ」に「ちょび髭」ってことかい・・・?「ハヤシさん全然変わらないね」と言われたが、うむ、お互い様じゃ。

 ・・・なんだか、だいぶ話がそれたようじゃ。もとに戻そう。
 そう、編集者とマンガ家は「恋人」同士ににているかもしれない。魅力がなくなったらスパッと切られるのだ。あんなに仲良しだったのに冷めたら没交渉。電話の1本もかかってこない。そしてマンガ家はべつの「恋人」を探すのだ。 

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