第15回 連載体験記その3 少年サンデー編

 さて、少年サンデーでデビューして、デビュー作からそのまま週刊連載になったのが「音吉君のピアノ物語」というマンガだった。タイトル通り、ピアノものだ。
 ただ、すでに12年前のことなので、私自身うろ覚えということもあるが、それでも、いくつか憶えていることを掘り起こして、ここに書き綴ってみようかのお。

 その時の担当さんはまあまあクラシック好きな編集さんだった。「ガラスの仮面」も好きらしく、「音吉」もああいう感じの話にできたらいいねえ、と言っていたっけ。そして、新品の「ガラスの仮面」当時出ていた巻すべて単行本30数冊どどどっと持ってきてくださった。
 ああ、何と、良い担当さんなのだー。

 ただ、この担当さんと組んで連載を始め、ネームをみてもらいながらの「打ち合わせ」の時、「おもしろい」か「つまらない」としか言ってくれなかった。もちろん「おもしろい」であれば問題はない。困ったのは「つまらない」と言われたときだ。
 「じゃあ、どうしたら、いいんでしょう?」と聞いたら
 「それを考えるのが漫画家の仕事でしょ」と返された。
 そ、そうか・・・でも私は初めてのことなので「そういうものなんだ」と思った。けど、一緒に話を考えてくれる編集、あるいは編集が話をつくってしまい、漫画家はその通りにさせられるとか、いろいろなケースがあることを後々知るわけだが・・・本当にこの担当さんはアドバイスというものをほとんどしなかった・・・これがいいことなのか、よくないことなのかは分からないが・・・

 でも、そうやって、話作りのすべてを、ほぼ私の好きなようにさせてもらった。「ピアノ」は私の方がとりあえず編集より知っているので、担当さんも口出ししにくかったというのもあるだろう。
 すべて自分で考えろ・・・ということで、ネームにとりかかる前に「打ち合わせ」などしたことがなかった。
 そういう感じで、2人目3人目と担当が替わっても、やり方は変わらなかった。担当はあまり口出しせず、最終回までかなり自分の好きなようにやらせてもらえていた。

 ただ、コンクールなどで勝ち進み、優勝などをさせてしまうと、やはり話作りに困った。少年誌とは、やはり主人公が成長していって、次々に現れる強い敵を倒すというのが王道だ。その際、敵はどんどん強くしなければならない。そりゃそうだ。弱い敵と闘っても話は盛り上がらない。
 でも、ピアノでどうやって、表現するんだ?ある程度までいくと、それはできなくなる。格闘技じゃないんだから。ピアニストにとって強い敵ってどんな敵?強さをどうやって現す?そもそも「ライバルと闘って打ち勝つ」というのが、ピアノを極めることになるのか。

 ということで、コンクールネタが終わり、困った、困ったとなって、そろそろ終わりにしたいと思っていたら、編集部のほうでも「終わりにしたい」といってきた。

 なので、その後の「スーパージャンプ」の連載で本当の厳しさを知るのだった。

 ところで、「音吉」で1番気に入っているシーンといえば、やはり、「血染めの鍵盤でピアノを弾くシーン」だ。え?指から血を流しながらかって?あるいは血を吐きながら・・・?ああ、それだったら、どんなに壮絶なドラマになるだろうか・・・ところが、音吉君が鼻血を流しながらボタボタと鍵盤を血染めにしていったのだ。指が血ですべる。うお、音吉君、「ピーン血(チ)」・・・というわけだ。でも、音吉君は血にも負けず鼻血をボタボタとタラしながら根性(?)で弾き終える。
 その後、ライバル登場・・・ああ、なんと音吉君が弾き終わったあとなので「血染めの鍵盤」が・・・
 本当の意味で気の毒なのはライバルの彼だ。そりゃ気持ち悪いだろう。鼻血染めのピアノで弾かなきゃいけないなんて・・・そりゃ、ライバルは仕方なく自分のハンカチでフキフキしたが、あわれ、ライバルの彼は集中できず散々な演奏をしてしまうのだ。
 このシーンではクールな担当さんも思わず笑った。私も笑いながらネームを切ったシーンだ。
 音吉君、悪気はないけれど、敵にナイスな罠をしかけたことになる。ちなみにこのマンガ、ギャグマンガではないぞ。

 さてピアノに罠といえば・・・「ハヤシの戯言」では、鍵盤と鍵盤の間に「刃」を差し込んで罠を仕掛けるというテレビドラマについて語った。だが実際は「戯言」でも書いたが不可能だと思う。でも、モノは試し。絶対に不可能かどうか、自分のピアノで実験してみようかなあと思ったが、やはりやめておく。底に落ちて、取り出せなくなったら、やはりね・・・。調律師が取り出してくれるだろうが「ハヤシサンってアブナイお人」と思われるだろう・・・

 ・・・もし誰か、やってみた人がいたら、ぜひ掲示板にご一報をお待ちしてます。

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