物語「アナザー・クロノトリガー冒険編」

「アナザークロノトリガー小ネタ編」の設定を利用して、新たに物語を作ってみた・・・

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BC12000年・・・高度な文明を誇るジール魔法王国。
ここで賢者ガッシュの発明によるタイムマシンの実験が行われていた。

「時間を操ることが出来れば、神になれる」
世界を制していたジール王国・・・これ以上を望むとすれば・・・「神になるしかない」と女王ジールは野望を抱いていた。

もちろん、タイムマシンを軽々しく使用してはいけない、とガッシュもサラ王女も、他の賢者たちも分かっていたし、ジールに忠告していたのだが、ジールは聞き入れなかった。みんな、ジールに逆らえなかった。
また、ガッシュも科学者として「タイムマシンを作ってみたい。時間研究をしてみたい」と純粋な気持ちもあり、タイムマシンの開発が進められたのであった。

そして、ガッシュによって完成したタイムマシン「時の翼・シルバード」の実験が行われた。

が、それは失敗に終わり、「時の翼・シルバード」は制御不能に陥り・・・中途半端にタイムゲートとつながってしまい、実験に立ちあった者達が時空をとばされてしまったのだった。

その刹那、ガッシュはつぶやく。
「もっとエネルギーが必要だったのか・・・大きな火・・・ラヴォスの欠片・・・赤い石ドリストーンだけでは無理だったのか・・・」


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AD1000年

何か巨大なものが降ってきた・・・その日、ものすごい衝動が、クロノの村を襲う。

「一体何?」というわけで、さっそくに、クロノと幼馴染のルッカは出かけたのだった。
「なにか、すごいエネルギー反応がする」とルッカの発明品エネルギー探知機のようなものが働き、クロノとルッカを導いた。ある大きな物体の死骸みたいなものに。
「これは何だ?」

その死骸らしきものの傍らにその生物の子供らしきものがうずくまっていた。

「あのコから非常に高いエネルギーを感じるわ」と、エネルギー探知機らしきものを携えているルッカ。
このところ、いろいろな発明品を稼動するのに、大いなるエネルギーが必要なので、常日頃エネルギー源になりそうなものを探しているのであった。

そこへ、モンスターなるものが、正体不明の生き物の子供らしきものに襲い掛かった。
もちろん助けるクロノ。
・・・いや、助けなくとも、本当はこの正体不明の生き物(ラヴォス)は子供なりにすごい戦闘力が潜在的にあるのだが、クロノのほうが先に動いてしまったのだ。ただ、生まれたてなので、もしかしたら苦戦していたかもしれないし、自分が強いのだという自覚も、まだこの生き物にはなかったかもしれない。

というわけで、助けてくれたクロノに対し、「生き物」は警戒もせずに、抱きかかえられた時もおとなしくしていた。
そこへルッカが「こんなところにいたら、また襲われるわ・・・そうだ、この私が面倒をみてあげるわ」とクロノから生き物を取り上げるのだった。
「それに・・・この生き物をちょっと調べてみたいし」と科学者としての顔をのぞかせた。

そんなルッカを見て、クロノは、今までのルッカの発明品による過酷な実験台人生を思い出さずにはいられなかった。
もちろんルッカは普段は優しいいい奴である。が、そこに科学的興味が入ると、周りの迷惑を考えずにつっ走るのである。

正体不明だが、いたいけ(に思える)な小動物?をルッカの手に渡して良いのか・・・
もしも何かの実験台にされたら、かなりかわいそうじゃないか・・・モンスターに襲われることよりもかわいそうかもしれない。

もしもクロノの世界に「ドナドナ」があったなら・・・

きっと、ルッカにつれられようとしている、いたいけな生き物を見て、「ドナドナ」の悲しい歌が思い出されたかもしれない・・・連れられていく哀しい目をしていた子牛、暗い未来が待っているであろう子牛と重なるものを感じたかもしれない。もちろん、この生き物に「目」らしきものはないのだが・・・

きっと牛肉は大好きなクロノだろう・・・だが「ドナドナ」を聴けば、かわいそうに思うであろう。
>ところで、君は「ドナドナ」を知っているか?世代によっては誰もが知っている哀しげなお歌である。そこのあなたも、学校の音楽の授業で「ドナドナドーナードーーナーーーーッツ」と、密かに「ツ」をつけて歌っていたりしたはずである。

おっと「ドナドナ」について、こんなに語ってどうする・・・話を元に戻そう。

「いや、これはオレが面倒みるよ・・・だって、ほら、ルッカは発明で忙しいだろ」と、ルッカに恐る恐る交渉してみるのだった。
「・・・そうねえ・・・」
「みんな、ルッカの発明を楽しみにしているんだぜー。早く次の発明品をみてみたいぜ」と心にもないことを言っておだてるクロノであった。
「じゃあ、あんた、嫌がらずに逃げずに実験を手伝ってくれる?(実験台になってくれる?)」
「・・・も、もちろんっ」
「男に二言はないわね」
「・・・たぶん・・・」
「じつは、すごい研究をしているのよっ。楽しみにしていてねっ」
「・・・うん・・・(すごい恐ろしい研究しているんだな)」
「そうね、たしかに動物の世話をしている暇はないわ。だから、それはクロノにまかせるわ。私も時々様子を見にくるわね。ちゃんと世話をするのよ。何かあった時は相談して」と、生き物をクロノに渡すのだった。

こうして正体不明の生き物のお世話をすることになったクロノ。
が、なにせ正体不明なので、どうしたらいいか分からない。

でも、一緒に過ごしているとなんとなく分かってきた。
有機物であれば、なんでも口にする・・・で、べつにお腹を壊すこともなく、そんなに気を使わなくてすみそうである。(ま、本当は有機物というよりも遺伝子を取り入れているのであるが・・・)

それは置いておいて、いっこうに「フン」をする気配がなく、ちょっと心配であった。

が、ようやく、「フン」をしたのである。
それは、なんとも・・・・硬そうな・・・赤い色をしていた。

「う・・・まさか、血便・・・あまりに、うんちが硬いから出血しちゃったのか・・・」と、痔にならないかとクロノは心配した。

そこへルッカがやってきた。
「なにか、すごいエネルギー反応を感じるわ」

と、そこへ、その「フン」を見て、驚くのだった。
「こ、これは赤い石・・・ドリストーン」

「何、それ?」
「ごくごくまれに空から降って来るというエネルギーを秘めた伝説の石のことよ。ラヴォスの破片とも言われているわ。まさか、こんなところでお目にかかるとはーーー」
「空から降って来る・・・って、この硬いうんちが空から降ってくるのか・・・それははた迷惑な話だぜ」
「何を罰当たりなこといっているのよ、これはすごい石なのよ。この生き物、すごいわっ。赤い石を排泄するなんて。クロノ、この生き物がフンをしたら、ちゃんと保存しておいてね」
「うんちをとっておけというのか・・・」
「別に汚くはないわ。ほら見て、フンというよりも硬質な赤い綺麗な石よ。臭いだって全然しないし」
「しかし・・・うんちが、それほどのエネルギー源になるとは・・・ま、でも考えてみれば、牛の糞も燃料となるわけだしな・・・」

伝説の赤い石を排泄した正体不明の生き物を見て、ルッカはふと思った。
「もしかしたら、この生物は本当に宇宙からきた、この星の生命体ではないのかも・・・。そういえば、この子の親らしき死骸は、かなり硬そうな殻をしていたわね。宇宙から降ってくれば、摩擦熱が相当だけど、本来それにも耐えうる体をしているのかもしれないわ・・・ああ、もしかしたら親のほうも、空から降ってくるときにフンをしていて、どっかに落ちているのかもしれないわ。親のほうのフンは、もっと大きくてすごいかも・・・遠くまで反応するエネルギー探知機を作って、調査しなくっちゃ・・・」とルッカは目を輝かせるのであった。「そうそう、赤い石は、大きい火を意味する言葉『ラヴォス』の欠片とも言われているから、この生き物はラヴォスと名づけるのがいいわ」
「いや、プチって鳴くから、オレはもう『プチ』って呼んでいるんだけど」とクロノ。
「ま、どっちだっていいけれど・・・ところで、このフンは私がもらっておくわ。またフンをしたら呼んでね」と、ルッカはラヴォスのフン=赤い石をもって、嬉々として帰っていった。

このラヴォスという生き物は宇宙をさまよい、たまにフンをして、それが、たまたま、空から降ってくるのか・・・
やはり、クロノにははた迷惑な話にしか思えなかったが、あのルッカが目の色変えるような伝説の貴重なフンをするプチが、すげえやつにも思えてきた。
が、あんな硬いフンをするなんて、やはり体に良くないのでは、と、ちょっと心配なクロノであった。

ところで、ラヴォスが降ってきて、クロノの村に衝撃が起き、人々は驚いたわけだが、当然、それはガルディア王国にも伝わり、調査するように、とガルディア王からの命令が出ていた。

が、ガルディア調査隊が、親ラヴォスの死骸に到着したときは、クロノたちが生まれたての赤ちゃんプチラヴォスをつれて去った後であった。
ガルディア王が耳にしたのは「正体不明の何かが、空から降ってきたらしい」というだけの調査結果であった。

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クロノがプチ(ラヴォス)と一緒に生活するようになって、プチもクロノに懐くようになってきた。
最初は寝てばかりのプチだったけれど、だんだんクロノと一緒の生活リズムになじみ、今ではすっかりクロノにくっついて過ごすようになった。
クロノも、プチの顔だか口だかわからない無表情に思えたご面相も、今ではとても愛らしく、うちのプチが一番可愛い、という親バカブリであった。

そうこうしているうちに千年祭の日がやってきた。
ガルディア王国建国1000年の記念祭である。

そこでルッカもいろいろな発明品が披露する予定だった。
ルッカの発明品はともかく、クロノは千年祭をとても楽しみにしていた。ルッカは発明品披露準備のために先に行っていたので、後からプチを連れて、会場に向かうクロノであった。

そこへ、走ってきた女の子とぶつかってしまう。
女の子はひどく慌てている様子で、「あ、見つかっちゃう・・・大丈夫?ごめんなさい・・・」と言い残し、走り去ってしまった。
その後から「マールディア様・・・お待ちを・・・」「バカ・・・こんなところで姫の名を口にするな」と男たちが慌てふためき、どうやら女の子を追いかけているようであった。

「・・・・・・」
女の子が男に追われているみたいだけど助けるべきか・・・けど、男たちも悪そうに見えないし・・・とクロノが迷っているうちに、女の子も男たちも見えなくなっていた。と、そこに、ペンダントが落ちているのに気づいた。
「あの女の子のものかも・・・」クロノはとりあえずそれを拾うのであった。

こうして、千年祭を楽しみながらも、ペンダントを落とした女の子を捜していたクロノだったが、人が多く、なかなか見つからなかった。
「あ、そろそろ、ルッカの発明品お披露目の時間だ・・・行かなきゃ、またルッカから怒られる・・・」ということで、ルッカのところへ行くのだった。実験台として。

そこに、あの女の子がいた。
ペンダントを届けるクロノ。
「ありがとう・・・よかった、これは古ぼけているけど、うちに代々伝わるお守りのようなものなの」と女の子。
女の子は「マール」と名乗った。

「あらあら、クロノ、やるじゃない、その女の子は?」とルッカも加わり、3人で千年祭を楽しむことになった。
もちろん、ルッカの発明品お披露目もあり、マールは果敢にも実験台になってくれたりした。ルッカの発明品に興味シンシンのようである。
「気に入ったわ」と眼鏡を光らせるルッカ。
3人はすっかり打ち解けて仲良くなるのであった。

楽しい時は瞬く間に過ぎ去った。
「帰らなくて、まだ大丈夫?おうちはどこ?」とマールを心配するルッカ。
「・・・うん、まだ大丈夫。で、まだどこかに行くの?」とマール。
「今日の私の発明品、研究の成果を、私の先生に報告に行くのよ」と得意げなルッカ。
「私も一緒に行っていい?もうちょっとクロノとルッカと一緒にいたい」
「もちろん」
「ありがとう。ところでルッカの先生って、どういう人?」
「うん、なんというか、とても不思議な人なの・・・」
「不思議?」
「あるとき、私たちの村に現れたの。遠いところから来たんだって言うんだけど・・・で、すごい科学知識のあるおじいさんなのよ」

3人は、ちょっと人里はなれた家にたどり着いた。
「先生、ルッカです」とルッカが声をかける。
「ルッカとクロノか・・・おや、もう一人新しい仲間も一緒か」と、老人はマールを見やり、その胸にかけられているペンダントを見ると、突然、顔色を変えた。

「・・・サラ・・・」

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遠いところからきたという老人・・・ルッカは、この老人を「先生」と呼び、いろいろと教わっていたのであった。
そのおかげで、ルッカの発明力?はパワーアップし、実験台となるクロノは大いに迷惑をこうむるのだが・・・

そのルッカに連れられて、いつしかクロノも老人のところへ遊びに行くようになったのであった。
そう、ルッカの言っていた「伝説の赤い石、ドリストーン」のことも、この老人から聞いていた。老人も、その小さな小さな赤い石の欠片を持っていたのだ。

なので、プチがフンをしたとき、さっそくにルッカは、そのフン=ラヴォスノ欠片と言われる赤い石・ドリストーンを、老人のところへ持っていき、クロノとプチを連れて行ったのだ。
プチが赤い石を排泄すると知ったとき、老人はたいへん驚き、そしてつぶやいた。
「これを集めれば・・・時の翼ができる・・・」
「時の翼?」とルッカ。
「いや・・・」と口を濁すと、老人はしばし考え込んだ。

ルッカは優秀だ、いや天才といっていい・・・もし、設計図があれば、あれを作り上げてしまうだろう・・・設計図は、ワシの頭の中にある・・・

老人は、もう自分の命が長くないことを思った。
この愛弟子に自分の培ってきたもの、自分が捧げてきた研究を受け継がせたい。

「・・・でも、これは危険じゃ・・・」

老人は、遠い遠い昔の時代・・・かつて、この実験の失敗により、タイムゲートに飲み込まれ、時空を飛ばされた。
自分以外にも飛ばされた者がいるかも・・・いや、いるに違いない。飲み込まれた者をこの目で見ながら、自分も飲み込まれたのだ。
あの実験に立ちあった者はきっとどこかの時代に飛ばされた・・・と胸がつぶれる思いであった。
せめて、自分のように、別の世界に、別の時代に飛ばされても、幸せに暮らしていて欲しいと願わずにはいられなかった。

ただ・・・
もしも「時の翼」を完成させられれば、飛ばされた者たちがどうなってしまったのか分かるかもしれない・・・助けられるかもしれない・・・

老人の心は迷っていた。

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そこへ、かなり古ぼけているが、サラ王女と同じペンダントをした女の子が現れたのである。たしか「実験」にはサラ王女も立ちあっていた。弟のジャキと一緒に。

老人=ガッシュは動揺しつつも、マールのペンダントを見つめながら聞いた。
「・・・そなたは?」
「マールです」
「そのペンダントは・・・?」
「家に代々伝わっているお守りのようなもので・・・このペンダントがどうかしたんですか?」
それには答えず、ガッシュはさらに聞いてきた。「そなたの家とは?」

「・・・ええーと・・・その・・・」マールは口ごもってしまった。
もしも、自分が王家の人間だと分かったら引かれてしまう・・・せっかくできた友達がまた・・・

マールはクロノとルッカを見た。
ルッカも「そういえば、マールのお家の人、心配しているかも・・・お家どこ?送っていくわよ」と聞いてきた。

友達にウソはつけない。ウソはつきたくない・・・マールは「ガルディア・・・城」と正直に答えた。

「えええーーー?」

マールは、本当の名前は「マールディア」といい、自分が王女であることを明かし、でも、普通の友達として接してくれるように頼んでみた。
最初は驚いていたクロノとルッカだが、すぐに今まで通りの友達として接してくれた。

ガッシュは、しばらく思案顔で黙り込んでしまったが、ハッと我に返り「今日はもう遅いから帰りなさい」と3人に帰るように促した。

と、そのとき、ガッシュはふらつき、倒れこんでしまった。

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クロノは倒れたガッシュをベッドに運んだ。
間もなく、ガッシュは気を取り戻す。
「ワシも歳じゃな・・・心配かけた・・・」とルッカたちに語りかけた。

そしてガッシュの思いは交錯する。

全く別の時代にやってきて、孤独だった自分を癒してくれたルッカとクロノ・・・愛弟子のルッカに自分が研究してきたことを受け継いで欲しい、時の翼を完成させて欲しい。そして、サラたちがどうなったのか知りたい・・・いや、それはあまりにも自分勝手、ルッカたちには関係のないこと・・・それに「時の翼」によって、悪い結果に彼らを導いてしまったら・・・危険だ。

が、「時の翼」への思いが、どうしても捨て切れない。
それは、きっと・・・

自分の後を受け継ぐにふさわしい能力をもった天才的なルッカ・・・
タイムマシン「時の翼」に必要なドリストーン「赤い石」を産む生命体・・・
武芸に優れ、その生命体に懐かれているクロノ・・・
そして今、目の前に現れたサラのペンダントを持つマール・・・

すべてが、何かとてつもない運命に導かれたように自分の前に現れたように思えた。

そう、もしかしたら、これは「運命」なのかもしれない。人智を越える何か、大きな力が働いたのかもしれない。それが自分の思いと重なるならば、彼らに託してもいいのではないか・・・
そして、もうワシの命は残り少ない。

「ワシの話を聞いて欲しい」
ガッシュは静かに、自分のこと、自分の思いや考えを話し始めた。

タイムマシン「時の翼」のこと・・・
タイムマシンが作られようとした経緯やジール王国のこと・・・
マールのペンダントは、ジール王国の王女サラがしていたものとよく似ており、同じものである可能性が高いこと・・・
自分は時空を飛ばされ、ここにやってきたこと・・・
サラを含め、一緒にいた者たちも時空を飛ばされた可能性が高いこと・・・

時空については・・・
タイムゲートは複数あり、そこから時空を移動する。
そしてタイムゲートのあるところに出る。しかもタイムゲートは時間の流れに従い、動く。
以前にきたことのある時代に飛べたとしても、以前よりも時間がたっている。
従って、タイムマシンを使っても、自分たちの行きたい時代や年、日にち、時間を細かく自由に選べないこと。

推論だが、タイムゲートがあるところは、歴史改変が許されている、と考えられること。あるいは歴史改変することも、時の歴史に組み込まれているかもしれないこと。
そして・・・なにか良からぬ者の手で、時の秩序が乱されようとしているのを止めて欲しいと、大きな力に導かれるように、今、自分の目の前に「すべてがそろったのかもしれない」ということ。

時の流れに違和感を感じたら、時の秩序が乱される兆候が出ていると考えていい・・・
そして、自分たちの生きる時間の流れの上に、また大きな時間の流れがあるのかもしれないということ。だから、ある時間軸の歴史改変しても、世界が破綻しないようになっているのかもしれない。

しかし、何もしない、という選択ももちろんある。
それはルッカたちに決めて欲しい。

「・・・・・・」クロノとルッカとマールはただ静かに聞いていた。

けど、ガッシュは、自分が一番強く思うことは話さなかった。
自分の研究や思いを継いで欲しい、託したい、それが自分の生きた証になる、死に行く自分の孤独を救ってくれる・・・

「心配だから、もうちょっと残る」という3人を帰らせた後、ガッシュは最後の仕事として「時の翼シルバード」の設計図を作り始めるのだった。

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「クロノ、マールをしっかり送っていくのよ。」とルッカは、やっぱりガッシュを一人にしておけないと、戻っていった。

「私も・・・」とマールは言いかけたが、いくらなんでも帰らなきゃいけない時間である。
お城のみんな、心配しているだろうな・・・でも、私だって、自由に外を歩き回ってみたかったし、友達も欲しかったんだもの・・・と心の中で嘆いた。

そんなマールに、クロノとルッカはくったくなくつきあってくれた。
いつまでも・・・これからもずっと・・・と願わずにはいられなかった。

「ねえ、もしタイムマシンが完成して、出かけることがあったら・・・私も一緒に連れて行ってくれる?」とマールはクロノに聞いてみた。
「うーん、あの話を聞いてみる限り、危険があるかもしれないけど・・・」クロノは思案顔だった。タイムマシンには興味シンシンだけど、女の子を危険な目にあわせるわけには行かない。
「大丈夫。こう見えても、私、護身術を仕込まれているんだから。とくに弓道には自信あるのよ」
「へえー」
「それに・・・あのおじいさん、私のペンダントのことを言っていたでしょう。私もペンダントのことを知りたいの」
「うん」
「で、冒険してみたい。時を越えるって、なんかワクワクするじゃない」
「それはオレも」

それまで静かにしていたプチラヴォスが「プチ」と鳴いた。まるで「自分も」と言っているように。

クロノとマールは思わず顔を見合わせ、笑いあった。
「ほんとうに、それ、珍しい生き物ね。旅に出たら、もっと、いろいろとめずらしいものに出会えるのかしら・・・すごく楽しみ。もちろん苦労することもあるだろうけど乗り越えてみせる」
そう、友達と一緒なら・・・とマールは思いを強くした。「だから、必ず、私も連れてってよ。約束よ。」
「うん、分かった」

城門の近くまで来たので、クロノはそこでマールと別れた。
マールが言うには、大変疑い深い大臣がいて、夜遅くまでマールと一緒にいたクロノを疑い、いわれのない濡れ衣を着せかねない、ということだった。

が、遅かった・・・
クロノは「姫を誘拐した」ということでお城の兵士に捕まってしまったのだ。

マールが「お城まで送ってくれただけ」と必死で弁明するが、大臣ヤクラは「姫誘拐の容疑で逮捕する」と耳を貸さず、クロノは牢屋へ閉じ込められてしまった。

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ガッシュが心配だ、ということで、ガッシュの家に戻ったルッカ。
「泊まっていく」というルッカに、ガッシュも「・・・教えられることはすべて教えておきたい」ということで、さっそくにルッカは、ガッシュのもとで「時の翼」を作る作業に入っていた。

ガッシュの家の秘密の地下室には、それ相当の設備がすでに備わっており、作業用ロボットもいた。
ここで、今までにもルッカはガッシュにいろいろと教わっていたのである。

ルッカは「もうガッシュは長くないのでは」という予感を胸に、ガッシュが生きているうちに、ガッシュの研究の集大成「時の翼」を完成させたいと、泊り込みで作業を進めていた。

そんな中、クロノがマールディア姫誘拐の容疑で逮捕され、裁判を待っている状態だという知らせを受ける。

「そんな、バカな・・・」と、クロノのことが心配なルッカだったが、クロノとの面会もままならず、お忍びでくるマールによって、様子を知らされるのみであった。

「ごめんなさい・・・私が言っても、お父様と大臣が耳を貸さないの・・・お父様はすっかり大臣の言いなりで・・・でも、裁判が始まれば、クロノは無罪になるわ、私が証言するもの」とマール。
「うん、クロノのことはマールに任せるわ。クロノのこと、お願いね。私は今は時の翼を完成させることをがんばる・・・」

こうして、しばしの時が流れ・・・
「時の翼」は完成に近づく。
「時の翼」を稼動するのに大切なエネルギー源「赤い石、ドリストーン」を産みだす・・・正確に言えばフンとして排泄するラヴォスと名づけている生命体・・・クロノが飼っているプチは、クロノと一緒にいるが、必要な量の赤い石ドリストーンは、すでにプチのフンをかなり集めていたので、問題はないと思われた。

「でも、予備に、もう少し、プチのフンが欲しいわ・・・クロノに、プチがフンをしたら、ちゃんと忘れずに持って帰ってくるように伝えてね」とマールに念を押すルッカであった。

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そして、裁判の日がやってきた。

マール誘拐容疑で裁判にかけられるクロノ。
もちろん、マールは「私は、自らお付の者から逃げ出し、途中でクロノに会い、一緒にお祭りを楽しみ、その後、送ってくれただけ」と証言し、簡単に「無罪になるだろう」と思っていたが、大臣ヤクラは粘った。「姫はあの男にだまされているだけなのだ」
王も、かわいい娘を夜遅くまで連れ回した男が心情的に許せなかった。

裁判は長引いた。ルッカも証言台に立つ「姫とクロノは私とも一緒だった。姫とはお友達として一緒に時を過ごした」と。

「いろいろと調べてから、改めて判決を下す」ということになった。

それから・・・
タイムマシン「時の翼」、完成まであと一歩という日、クロノに判決が下された。
「終身刑」であった。

それは誰もが「姫の証言があるのに、本当に誘拐したのか?」と疑問に思ったが、反対できなかった。
大臣ヤクラは「罪人に重い罰をあたえてこそ、国の平和が保たれ、まとまっていくのですぞ」といって、王をも説得してしまうのである。

だが、大臣ヤクラとしては、本当は黒い計算があったのだ。

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クロノの終身刑が決まり、当然、納得のいかないマールであった。
そして、マールはクロノと面会することを禁じられた。

マールは王に口をきかなくなった。

そこへ大臣ヤクラが王に進言する。
「あの男が生きている限り、姫はあのままですぞ。姫はあの男に操られているのです。姫のためにも、国のためにも良くない事です。あの男を王様の命令で死刑にしてはどうでしょう。男がいなくなれば姫も目が覚めるでしょう。そしていつかは姫も王様の気持ちが分かってくれるはずです」

そして、王は、すっかり大臣ヤクラを信用しきり、大臣ヤクラの言う通りにしてしまうのであった。
王直々の命令でクロノは人知れず処刑されることとなった。

大臣ヤクラはほくそ笑んだ。
これで、王と姫の亀裂は絶対的になる・・・修復不可能だ。姫は王を恨む。
そして姫は傷つくだろう。自分のせいで、無実の青年が殺されるのだから。

王は、裁判で「終身刑」になった青年を、自分勝手に判決を変え、「死刑」にし・・・後で、その青年は無実だったと民が知ったら・・・民は王に対して不信を抱くだろう。
こうして、いろいろ仕掛けていけば、国民を煽動するのもたやすい事だ。姫からも民からも王は見放され、王の権威は失墜するだろう。
そのとき、この私がガルディア王国を仕切るのだ。

これこそが、ヤクラの思惑であった。

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こうして、クロノの処刑が人知れず行われることなった。
もちろん死刑執行人と牢屋の番人には王からの命令ということで、少数知ることとなるが・・・そんな中には、疑問を持つ者もいた。

「姫はこのことを知っているのか・・・公に出た判決を、いくら王だからといって密かに変えるのは、おかしいのではないか・・・」

そして、内々に、マールに「クロノ処刑」の話が伝わることとなる。

「大変だわ・・・クロノを助けなきゃ」
一刻の猶予もならないと、マールは、服を着替え、愛用のボーガンをもち、旅の用意をした。そして、預かっているクロノの木刀も携えた。

クロノも脱獄を考えていた。
無実の罪でこんなところで一生過ごすのは嫌であった。

そこへ、番人と死刑執行人がクロノの牢屋を開けた。
「・・・出られるのか?」
「ああ・・・でも、すぐに地獄行きだ。お前は死刑になるのだ」
「え?」
「そのペットは邪魔だな」と番人は、クロノにまとわりついているプチを引き離そうとした。

と、その時、プチがあの口らしきものを開けると同時に番人と執行人は吹き飛んだ。
番人と執行人は気絶していた。

「?・・・もしかして、プチ、お前がやったのか・・・すごいな」

さっそく脱走開始である。

と、その前に・・・この間、牢屋の中でした、ルッカの欲しがっているプチのフンをもっていくのを忘れなかった。もう、これは習性である。
「ああ、こんなときにも・・・つくづくオレはルッカに操られているよなー」と、ぼやいた。

クロノの前に立ちはだかる番人たちは、すべてプチが吹き飛ばしてくれた。

そこへ「クロノーーー」と騒ぎを聞きつけ、マールが走ってきた。
「ここを出ましょう」と、クロノの手錠をはずし、木刀を渡した。

お城の造りを知り尽くしているマールの手引きにより、ごく少数の者しか知らない秘密の通路を通って、お城の外へクロノは向かった。

しかし、あと一歩というところで、「逃がさぬ」と、大臣ヤクラの操る「ドラゴン戦車」が行く手を阻んだ。

ドラゴン戦車は、姫マールがいるのに、容赦なく、攻撃をしてきた。

マールはボーガンで、ドラゴン戦車の前輪を狙った。複数放たれた矢はすべてドラゴン戦車の前輪に命中し、ドラゴン戦車の動きが鈍る。
そこへ、クロノが、ドラゴン戦車に飛び掛り、火を噴くドラゴン戦車の口に木刀をつっこんで塞ぎ、すばやく戦車から離れ、ドラゴン戦車の頭を暴発させた。
さらにプチが、ドラゴン戦車を吹き飛ばす。先ほど、番人たちを吹き飛ばした威力とは桁違いであった。

「・・・お前、ほんとうにすごいんだな」クロノはプチをみやった。・・・可愛いだけじゃなかったんだな。
可愛いだけじゃないのは、そこのお姫様も同じのようだけど・・・とマールの実力を認めるクロノであった。

ヤクラは動かなくなったドラゴン戦車から脱出し、逃げてしまった。

あとは、もう敵なしであった。
クロノたちは城の外へ抜け、脱走に成功した。

しばらく走り、だいぶ城から離れた頃、クロノは走りを止め、後からついてくるマールに話しかけた。
「マール、お城を飛び出してきていいのか?オレはずっと逃亡生活になる・・・だから、ここで・・・」
「約束はどうなるの?」
「約束?」
「一緒に冒険に連れて行ってくれるっていう約束よ。もう、旅の用意までしてきちゃったんだから」
「・・・・」
「とにかく、ルッカとガッシュおじいさんのところへ行くわよ」

ーーーーーーーーーーーーーーー

その頃、ガッシュの家では、タイムマシン「時の翼シルバード」が完成していた。

ルッカは、クロノが終身刑にされたと知ったとき、クロノを脱獄させ、シルバードを使って逃げることを考えていた。
そう、脱獄させて逃げても、きっといつかは捕まるかもしれない、怯えながら逃げる生活が続く・・・けど、時空を越えれば、100パーセント逃げ切れる。

ガッシュも、ルッカの考えに賛成であった。一生、孤独に牢屋の中で生きていくなんて、死刑よりもある意味、厳しいだろう・・・無実の青年を、一部の者たちの独断で終身刑にするこの国の行く末も案じていた。そして、はるか昔の自分がいたジール王国を思い出していた。

女王ジールも、独裁的で、誰の意見にも耳をかさず、気に入らない者を粛清していった。
ジールは己の欲望を暴発させていった。
しかし、そのジールの欲望のおかげで、自分は思う存分、時間研究ができたのだ。ジールは、時間研究のためなら惜しみなく援助をし、研究を進めることを最優先させてくれた。

「ワシも研究したいという欲望に走ったのだ・・・ジール様のことは言えない・・・」

そして、ジール様は孤独だったのかもしれない・・・
皆は、ジール様を恐れ、敬遠していた。
ジール様には頼れる者も信用できる者もいなかったのだろう・・・

ガッシュは思いをめぐらせる。

孤独の辛さは、この時代に飛ばされたときに、しみじみ堪えた。
が、今のワシにはルッカとクロノがいる。彼らがワシの信じられる頼れる仲間だ。
だから、今、ワシの命といっていい「時の翼」を彼らに託したい。

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ガッシュの家に、クロノとマールがたどり着いた。もちろん、プチも一緒である。
その前に、クロノは自分の家に立ち寄っていた。ジナ母さんに別れの挨拶をし、そして大事にしていた刀を持った。
ルッカから計画を聞いていたジナ母さんは「体だけには気をつけて」と見送ってくれた。


「脱獄、成功したのね」ルッカがクロノたちを迎えた。
マールから、「実はクロノが処刑されそうになっていた」との話を聞き、ルッカとガッシュは驚き、改めて「時の翼シルバード」の完成を急いでよかったと胸を撫でおろすのだった。

「じゃあ、出発するわよ」
「・・・ルッカもいいのか?危険な旅になるかもしれないのに・・・」
「当然でしょ。時の翼は私が作ったのよ。私以外、だれがメンテナンスするの?操作方法だって今は私しか知らないでしょ。教えているヒマないし、ちゃんと旅の用意もしてあるんだからね。ガッシュ先生のことは、うちのお父さんに頼んであるし・・・」とルッカはガッシュを見て、心の中で願う。
時空を飛び、ガッシュがいたジール王国のことを調べて、ぜひこの時代にまた立ち寄って、ガッシュが心残りにしていることを知らせてあげたい、それまでどうか生きていて欲しい、と。

もちろん、ガッシュがこの時代に飛ばされる前の、ジール王国時代に行って、助けることは出来ないだろう。
タイムゲートは動いていて、自分たちの好きなように、年、日にち、時間を設定して行くことは出来ない。

ガッシュがタイムゲートを通じて、この時代に飛ばされて来てから、10年くらいたっているという。
ということは、その分、ジール王国時代のタイムゲートもそれだけ動いてしまっていると考えられている。
今この時に存在するタイムゲートをくぐっても、そこからつながっているジール王国時代の近くに存在するタイムゲートは、ガッシュがとばされてから10年後の時代である。同じだけ「時間、年月がたったところ」にしか行けないのだ。
(ちなみに、ガッシュが飛ばされた時のタイムゲートは、この時代の10年前のタイムゲートにつながっている、10年後の今にはつながっていない、ということになる。まあ、タイムトラベルものは突き詰めれば矛盾が生じるのは仕方ない)

「まずは、この時代から、一番近くのタイムゲートのある時代へ行ってみるわ」と、ルッカはシルバードを操作始めた。

ガッシュの家の地下にあるシルバードとその発射台のレールは、斜め上に伸び、地上へつながっていた。
シルバードを稼動させれば、タイムゲートが現れるはず、そして時空を越えられるはずである。

ガッシュは「大丈夫・・・計算は完璧だったはず・・・赤い石でシルバードの機体も補強してある」と思いつつ、ジール王国での失敗を思い出していた。
が、あの時は完全な失敗というわけでもないのだ・・・ちゃんとタイムゲートが出現し、自分は時空を越えたのだから。だが、帰る手段を失った。
・・・でも今はもう帰りたいとは思わない。ここがワシの骨を埋めるにふさわしい場所だ。
ただ、自分のほかに、実験に立ち会っていたどの時代に飛ばされたか分からない者たちの安否だけが心配である。が、もう自分の命は尽き掛け、旅にも耐えられないだろう・・・

あとは、クロノたちに託そう。
時の翼が、彼らの逃走に役立つのなら、処刑させられそうだったクロノの命が助かり、安心して暮らせる時代にたどり着き、ルッカが喜ぶのなら、それだけで嬉しい。

ルッカたちと視線が合った。
ガッシュが軽く頷いたあと、シルバードは消えた。

「成功したか・・・」
ガッシュは、満足そうに笑みを浮かべながら、その場に崩れ落ちた。

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